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行ってみたやってみた

久留島武彦記念館

日本のアンデルセンに会いに行こう!
体験型「久留島武彦記念館」には ワクワクがいっぱい。

2021.11.12

玖珠出身の偉人、日本のアンデルセンと呼ばれる久留島武彦をご存知でしょうか?
数々の物語を生み出し、口演童話会等を通して子どもたちの教育に尽力した“日本近代児童文学のパイオニア”といっても過言ではない存在です。

実は久留島先生、ただの児童文学者ではありません。森藩のお殿様の孫であり、新聞記者、幼稚園経営者など様々な顔を持っています。そして「日本初の週刊子供新聞『ホーム』創刊」「日本初の専門児童劇団の東京お伽劇協会設立」「日本初の世界一周観光旅行に通訳として参加」「日本で初めてボーイスカウトを紹介し、その基礎づくりに尽力」「日本で初めてピースをして写真を撮る」など様々な“日本初”を成し遂げた人でもあるんです!

今回は映像、音楽、クイズなど様々な工夫を凝らした10の部屋を巡る「久留島武彦記念館」の紹介を通して、久留島先生の奥深い世界へご案内します。
周辺は紅葉の名所でもあるので、秋のお出かけにぴったりですよ♪

久留島先生と童話に登場するキャラクターたちがお出迎え

記念館に入ると最初に出迎えてくれるのが、鮮やかなウェルカムウォール(壁画)。等身大の久留島先生と、先生が作った物語のキャラクターたちが賑やかに描かれています。壁の前が絶好の撮影ポイントと聞き、早速パチリ。

普通に並んで撮ってもいいのですが、おすすめは写真のような手つなぎ。まるで本当に手をつないでいるような写真が撮れてかなり“映え”ます。 いろんな撮り方が楽しめるので、皆さんも色々工夫してみてくださいね♪

心に刺さる、名言満載のブックウォール

今回案内してくれた学芸員の宝珠さんが立っているのはウェルカムウォールのお隣、ブックウォールの前。ここには久留島先生の作品が載った本の表紙や、教育者として残した名言がズラリと並んでいます。その中で一際目を引いた言葉が『チャンスはハゲおやじ』。『継続は力なり』や『知恵は人間を造らない 「正直」と「信念」が人間を造る』などかしこまった言葉の中にポンとあるのですごく目立つんですよね。思わず二度見してしまいました。

「久留島先生は子どもたちに向けてお話しすることが多かったので、面白くわかりやすい名言をたくさん残しています。“チャンスはハゲおやじ”はその代表ですね。ギリシャ神話のチャンスの神様は前髪しかなく、通り過ぎると捕まえることができない。チャンスを掴むためにはその機会を逃さないようにしっかりと準備しておくことが大切なんだよ、という意味です」と宝珠さん。大人にもグサッとくる言葉。チャンスが掴めない、運がないと嘆く前に“常にチャンスを掴む準備をしておくこと“が大事なんですね…。

10の部屋を巡る冒険に出発!

➀久留島武彦文化賞を紹介する部屋

記念館の中はまるで体験型のテーマパーク。テーマごとに創意工夫を凝らした10部屋を巡りながら久留島先生やその作品、当時の時代背景などについて楽しく学ぶことができます。

1つ目は「久留島武彦文化賞」を紹介する部屋。 久留島武彦文化賞とは1960年に制定された“青少年文化の向上と普及に貢献した個人・団体に贈られる賞”で、日本全国、世界中の様々な人が受賞しています。タッチパネルで1960年から現在の歴代受賞者を見ることができるのですが、あの「水戸黄門」で黄門さま役を演じていた佐野浅夫さんなど、「え、こんな人が?」「この人も!?」と驚くことがしばしば。こういう読む系、調べる系はスルーする人も多いと思うのですが、じっくり読むとかなり面白いです。食わず嫌いならぬ、読まず嫌いはやめて、ぜひチェックしてみてください。

②童話碑が見える部屋

2つ目は「童話碑が見える部屋」。椅子やテーブル、ベンチが設置された部屋には大きな窓ガラスがあり、開放感たっぷり。文字どおり、窓ガラス越しに旧久留島氏庭園にたたずむ童話碑を眺めることができます。

「そもそも童話碑ってなんだ?」と思った方のためにここで少しご説明。童話碑とは久留島先生の功績をたたえ、昭和25年5月5日に建立された高さ712cm、幅3.07mの大きな石碑で迫力、重厚感があります。この碑の除幕式の後に行われたお祭りが、現在も5月5月に開催される童話祭のはじまりです。

大きな童話碑をボーッと見上げていると、「童話碑の地下3mには全国の小学生が夢を書いた4万個の小石が敷き詰められているんですよ」と宝珠さんがポツリ。 足元に4万個の夢が詰まっているって、なんだかすごくロマンティックですよね。当時の小学生は現在80歳前後。一人でも多くの夢が叶っていますように。

③久留島先生を学ぶ部屋

3つ目は「久留島先生を学ぶ部屋」。森藩の9代藩主・久留島通容(みちから)の孫として生を受けた久留島先生の波乱万丈の人生、数々の功績、ユニークな人物像を本型展示台や、タッチモニター、年表などをとおして垣間見ることができます。

ここの目玉はなんといっても久留島先生の声!先ほどご紹介した「チャンスはハゲおやじ」について子ども達に話している口演肉声を聞くことができるんです!!実際に聞く久留島先生の声はあたたかくて、どっしりとした響き。子ども達が飽きないように緩急をつけた語り口、わかりやすくユーモアたっぷりの言葉選びに引き込まれます。随所に子どもたちの笑い声も入っており、人の心をつかむのが本当に上手い人だったんだなぁとしみじみ。 そうそう、「久留島先生を学ぶ部屋」には子ども達を楽しませる工夫もいっぱいあるんですよ。クイズ形式で板をめくると答えが出てきたり、穴をのぞくと童話のキャラクターがいたり…。小さなお子様も飽きずに過ごせそうです。

④いぬはりこの部屋

4つ目の「いぬはりこの部屋」には絵本やおもちゃがいっぱい♪親子で久留島先生の物語を楽しんだり、ブロック遊びをしたり、思い思いに過ごすことができます。実はこの部屋、保育教材を扱う株式会社ジャクエツさんによって寄贈されたもの。

「久留島先生が運営していた早蕨(さわらび)幼稚園(東京都)に、後にジャクエツの初代社長となる徳本達雄さんが視察に来たのがご縁のはじまりなんですよ」と宝珠さん。久留島先生の教育理念に感銘を受けた徳本さんは久留島精神を受け継ぎ、ジャクエツの社章に早蕨幼稚園のシンボルマークであった「いぬはりこ」を採用したそう。久留島先生の人柄、魅力が伝わるエピソードですよね。

これは余談なのですが、早蕨幼稚園は岡本太郎など著名人も多数輩出しています。久留島先生が残したものは確実に受け継がれ、今も日本中で芽吹いているのです。

⑤ものがたりの部屋

5つ目は「ものがたりの部屋」。ここでは久留島先生の童話作品を映像で楽しむことができます。上映されるのは13作品。1つの作品は5分程度ですが、笑いあり、涙あり、教訓あり…で、あっという間に時間が過ぎていきます。

写真は「海に光るつぼ」。終戦後の日本を舞台に、貧困に負けず靴磨きに精を出す少年・ケンイチが海での不思議な体験を通して成長する物語。ちょっと怖くて、でもしっかり教訓が盛り込まれてあって…。最後は前向きな気持ちになれる素敵なお話です。 映像は常に流れているので、1つだけ見てもいいし、全部楽しんでもOK。子どもはもちろん、お疲れ気味の大人の心もしっかり癒してくれます。

⑥日本を旅する部屋

6つ目は「日本を旅する部屋」。久留島先生の「足跡に咲いた花」をテーマとした空間で、かわいいキャラクターになった久留島先生といぬはりこのボンちゃんが、久留島先生が日本全国でどんな活動をしてきたのか、どんな功績を残したのかを詳しく教えてくれます。突然床に映像が現れたり、すごく楽しいんですよ♪

子ども達には変身ごっこも人気。スクリーンに顔を近づけると写真のように久留島先生の童話キャラクターに変身できるんです! 簡単なように見えてこれが意外と難しい。うまく顔に重ならなかったり、なぜか自分一人だけ反応しなかったり(笑)。ああでもない、こうでもないと大人でも充分楽しめます。

⑦世界を旅する部屋

7つ目は「世界を旅する部屋」。こちらの部屋のテーマはズバリ「航海」!船内をイメージした装飾が特徴で、少し高さの低い扉を屈んで入るところからワクワクします。床に描かれた地図は久留島先生が日本初の世界一周観光旅行に通訳として同行した際の航路。「船路と陸路を使い、3か月ほどかけて世界を一周したそうです。海賊の子孫らしいんですよね」と宝珠さん。

実は森藩の藩主・久留島家は瀬戸内海の村上水軍(海賊衆)の末裔(まつえい)。関ヶ原の戦いで西軍について敗れ、海のない豊後森藩へ移されたんだそう。海賊の子孫の久留島先生が世界を回る…。なんだか不思議な巡り合わせを感じます。 ちなみに、玖珠町で有名な「かいぞくかりんとう」はこの村上水軍に由来しているそうですよ。

⑧久留島先生ゆかりの部屋/⑨出会いの部屋

8つ目「久留島先生ゆかりの部屋」には久留島先生の作品(書・画)や愛用品、書簡、書籍などがズラリ。続く9つ目の「出会いの部屋」では勝海舟、岡本太郎など、久留島先生と交流のあった人たちについて知ることができます。

この2つの部屋は企画展示室としても使われており、12月26日(日)までは企画展「早世した才能の片鱗 陶芸家 中島均展」を開催中。 中島均は人間国宝である陶芸家・中島宏の兄。43歳で日本現代工芸展の審査員に就任するほどの人物でしたが、惜しくもその翌年に他界しました。今回は幻の作品50点を日本初公開!ここでしか出会えない世界を堪能できます。

⑩お土産ショップ

最後の部屋はお土産ショップ!ここでしか買えない様々なオリジナルグッズが販売されています。

久留島先生の名言や童話のキャラクターが描かれたポストカード(100円)、子どもに大人気のシール絵本(800円)、シールセット大(150円)・小100円、一筆箋(300円)、ボールペン(150円)など種類豊富なアイテムはどれもあたたかい雰囲気で、とっても魅力的。お土産ではなく、自分用に買っていく人も多いそうですよ。 久留島先生の名言集「チャンスはハゲおやじ」(1,650円)も購入できるので、興味がある人はぜひ手にとってみてください。心に響く、いや、刺さる言葉があふれています。

某人気鑑定番組からオファーがあった、久留島武彦直筆の絵

10の部屋をじっくり見て、「さて、帰るか」というときに目についたのが久留島先生直筆の絵「いぬはりこ」。明治30年作で、かわいらしく、味わいのあるいぬはりこが20何匹も描かれています(写真は一部)。

「実はこの絵を某人気鑑定番組に出さないか、という話があったんです。でも久留島先生に関してはうちの館長が第一人者ですし、作品の真贋(しんがん)をうかがうなんて、と思ってその時はお断りしました。今思うと先生を広く知ってもらうために受けてもよかったかもしれませんね」と宝珠さん。それにしても文章、絵、口演、語学…と久留島先生の多彩な才能に驚かされます。こんなにすごい人が玖珠町から誕生したなんて、すごく誇らしいですよね。

子どもや鉄道好きに大人気!三島公園の“触れる・乗れる”機関車

久留島武彦記念館の周辺には豊後森藩の陣屋跡が広がり、現在は三島公園として整備されています。その三島公園で大人気なのが、宮原線(廃線)で活躍した蒸気機関車C 11270・通称「くろちゃん」。玖珠町の蒸気機関車といえば豊後森機関庫公園のSL29612が有名ですが、この「くろちゃん」も負けていません。往時の姿そのままでたたずむ様は迫力満点、しかも見るだけでなく、中に入ることができるんです!展示された蒸気機関車は数あれど、中に入られるってすごく珍しいですよね。鉄道好きならずともテンションが上がります。 もちろん私も早速中に入り、記念にパチリ。中には機械等が当時のまま残されていてすごくリアル。活躍していた姿が目に浮かびます。機械が好きな人もきっと気にいるんじゃないかな?

久留島武彦記念館の周辺は美しい紅葉スポット!

久留島武彦記念館の周囲にある三島公園内には森藩8代藩主・久留島通嘉(みちひろ)が整備した庭園や神社があり、紅葉の名所として知られています。

写真の「国指定名勝・旧久留島氏庭園」(通称・三島公園)は森藩久留島氏陣屋跡西側の丘陵(末広山)を利用してつくられた日本庭園。藩主御殿庭園、栖鳳楼(せいほうろう)庭園、清水御門前庭の3つからなり、いずれも11月に入ると鮮やかな色彩に包まれます。色づいた木々、燃えるような紅葉と青空を映す池、久留島武彦の偉業を伝える童話碑、桃太郎の銅像…。それでいて日本画のように美しい景観はここならでは。 記念館の真横なので、気軽に散策できるのも魅力です。

三島公園内にあるもう一つの紅葉スポット「末廣神社」は、慶長6年、森藩主・久留島康親(やすちか)が郷里の伊予国の氏神である三島宮を勧請したことに端を発する、由緒ある神社。本殿を覆う覆屋は「鞘堂」(さやどう)と呼ばれる大規模かつ本格的な構造で、全国的にも珍しい二重屋根を見ることができます。

紅葉シーズンになると周囲の木々が一斉に色づき、岩をくり抜いて造ったとされる日本一大きな手水鉢や、石段、地面が極彩色に覆われます。 鮮やかな紅葉と風情ある建物の対比が秀逸で、まるで時が止まってしまったかのような…そんな不思議な感覚にとらわれる場所です。

旧久留島氏庭園にほど近い「角牟礼(つのむれ)城跡」の紅葉も必見です。「角牟礼城跡」は弘安年間に森朝通によって築かれた城で、島津軍の侵攻に耐えた、難攻不落の名城として知られています。慶長6年にこの地にきた久留島氏が城主としての格式がなかったことから、廃城となりましたが、現在も往時の姿を伝える「穴太積み」と呼ばれる見事な石垣が残されています。

三の丸付近に駐車場があり、そこから本丸まではゆっくり歩いて15分ほど。時間に余裕がある方、ハイキングを楽しみたい方には三島公園から続く登山コースもおすすめです。色づいた木々を眺めながらの散策、辿り着いた先にある青空と石垣、鮮やかな紅葉の美しいコントラストが日頃の疲れやストレスを癒してくれるので、「歩くのはきつい」「面倒くさい」という人もぜひ尋ねてみてください。損はありません!

※紅葉の見頃は11月上旬〜中旬ですが、気候により変わる場合があります。

おわりに

びっくりするほど多くの偉業を残しながら、まだまだ知らない人も多い久留島武彦。記念館ではその知られざる人生や人柄、功績、作品について“体験しながら”楽しく学ぶことができます。周辺は紅葉の名所なので、これからの季節は特におすすめ!お子様連れやご友人同士でぜひ遊びに来てくださいね。

久留島武彦記念館

大分県玖珠郡玖珠町大字森855番地

0973-73-9200

開館時間 9:30〜16:30

休館日 月曜日(祝日の場合は営業)、12/28〜1/4

入館料 町外者300円(250円)、町内者150円(120円)

高校生以下、18歳未満は無料

障がい者手帳等をご提示の方とその付添者(1名)は無料

年間パスポート町外者1,500円、町内者750円

 ※( )内は団体割引(20名以上)、町外者は、豊後森藩記念館入館料含む

http://kurushimatakehiko.com/

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