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行ってみたやってみた

九重(くじゅう)ふるさと自然学校

くじゅうで人と自然の関わりを学び、充実した一日を。

2021.12.28

大分県九重町の飯田高原に、自然環境や生態系の保護・保全活動に取り組む自然学校が開校していることを知っていましたか?
「九重(くじゅう)ふるさと自然学校」は、セブン-イレブン記念財団が設立10周年を機にスタートさせた“自然学校プロジェクト”の一環で、2007年4月に開校しました。
「人と自然、自然環境と地域社会の共存・共栄を自然から学ぶ」という理念に基づき、くじゅうの自然環境や生態系の保護・保全活動が行われているほか、自然と向き合い、楽しみ、体感できる様々な体験プログラムまで、取り組む活動は多岐にわたっているとのこと。今回はそんな九重ふるさと自然学校を実際に訪ね、その魅力に直に触れてきました!

九重ふるさと自然学校はなぜくじゅうの地に?

風に揺れる緑が美しい長者原や、雄大なくじゅう連山に息を呑む九州屈指のドライブルート・やまなみハイウェイから1本横道に入り、ほんの数分車を走らせた場所にある「九重ふるさと自然学校」。これからどんな学びが待っているのだろう?とワクワクしながら、扉を開けると、代表の川野智美さんが笑顔で迎えてくれました。

代表の川野智美さん。

まずはこの場所に学校を開校した背景についてお尋ねすると、「地域の方々の自然に対する強い思いが開校の決め手です」と川野さん。開校までに2年もの準備期間をかけたそうです。その間実際に住民の人々とコミュニケーションを取りながら、開校についての検討を重ねていたと言います。「自然の美しさはもちろんですが、住民のみなさんが自然と共に暮らす姿、地域の伝統を次の世代に継承していこうとする熱意に感銘を受けました。その思いは候補地の中でも群を抜いていましたね」。

住民との交流は開校決定後も続き、準備段階の敷地の整備から田んぼづくり、古くから続く自然の保護活動や、伝統料理などについて様々なことを住民から学んだそう。「地域のみなさんの協力なくして開校はできませんでした。だからこの学校の1番の特色は“地域に根差している”ところだと思います」。

事務所内には、くじゅうに関する書籍が揃う図書コーナーも。麦わらで作られた昔ながらの「ほたるかご」も展示されていた

多くの人々の思いをのせて開校した九重ふるさと自然学校は、セブン-イレブン記念財団がスタートさせた自然学校プロジェクトの記念すべき第1校目。「人と自然の橋渡し役となり、この美しい自然を次の世代へバトンを渡せるようこれからも地域と共に歩んでいきたいですね」と川野さんは話してくれました。

多種多様な動植物が暮らす、自然学校の四季それぞれの魅力

野鳥のコゲラ

学校の成り立ちを学んだら、いよいよ屋外へ。“さとばる”と呼ばれる広大なフィールドは7.2ヘクタールもあり、その大きさは東京ドームの約1.5倍分だそうです! 敷地内には野焼きによって維持された絶景スポットの草原から、多くの動物が暮らすクヌギ林ゾーンなど、気になるスポットがいっぱい! 約1.5kmに渡って自然散策路も整備されており、フィールドのどこを歩いても、四季折々の景色や生きもの達との出会いを楽しめちゃいます。

例えば春の4月頃には、野焼きを終えた真っ黒な大地では、暖かな太陽の日差しを浴びた黄色いスミレ、キスミレなどの可憐な花々が人々をお出迎え。夏に入った7月頃から植物の開花ラッシュが始まり、野草の影にはバッタ類、空にはトンボやチョウといった多くの昆虫たちの姿が見られます。秋の植物の主役はススキで、9月には白銀色のふわふわの穂が揺れ始めるそうですよ。

そして多くの動植物にとって眠りの季節となる冬は、バードウォッチングがおすすめ。木々が葉を落とすことで視界が開けるため、野鳥の観察には最適とのことです!

野鳥のヤマガラ

「実はフィールドの散策を自由に楽しんでいただけるようになったのは、2019年6月からです。それまではプログラムの開催日のみ参加者に開放していましたが現在はより多くの方々が親しめる場所となったので、ぜひ利用していただきたいですね」と川野さん。実際に敷地内を散策した人々からは、「まるで別世界に来たみたい!」という喜びと驚きの声が聞こえているようですよ♪

散策中に足を止めたいおすすめスポット

ここでは広大なフィールドの中から、川野さんのおすすめスポットを紹介していきます!

1. みいれが池

みいれが池の秋の様子

美しい池のほとりからは九重の山々を360度見渡すことができます。青い宝石と呼ばれるカワセミやサギ類、冬はカモたちで賑わい、野鳥観察にもおすすめとのこと。

2.  田んぼ

手植え・手刈りという昔ながらの米づくりと、多様な生きものを育む自然共生型の田んぼが特徴。田んぼ=生きものの生息地という考えからビオトープ(動物や植物が安定して生活できる生息空間)の整備を実践していて、春〜夏にかけてはトンボやカエルなどが姿を現わします。

3. チョウの草原

野焼きで維持される草原には、花の蜜を求めて多くのチョウが訪れます。草原にすむチョウの重要な生息地として保全にも努めているそう。

4. カシワの丘

カシワの木がシンボルの草原。くじゅうの山々を見渡すことができ、季節によって表情を変える絶景スポットでもあります。

見て・触れて・感じる! くじゅうの魅力を五感で感じる参加型プログラム

九重ふるさと自然学校の魅力と言えば、豊富な参加型プログラム。くじゅうの山々や草原、湿原、田んぼ、川など、豊かな自然環境の中での野外体験や、昔から伝わる里山の食や生活文化の体験活動は、事前に申し込みをすれば誰もが気軽に参加することができます。プログラムは通年開催しているものから月替わりのものまであり、例えば木を使って野鳥を呼ぶ道具作りに挑戦する「バードコールづくり」や、どんぐりなどでオリジナル作品を作る「どんぐりクラフト体験」は1年を通して土・日曜、祝日に開催中!

木の枝とボルトネジ1本というシンプルな材料で作るバードコールづくりでは、「意外に力がいるかも?」と少し苦戦しながらも、ボルトを木の枝に差し込むうちにキュキュッという鳥の鳴き声に似た音が…! 思わず「おおっ!鳴った!」と声を上げるスタッフなのでした(笑)。

「バードコール」づくり 参加料:500円。木に穴をあけてボルトをねじ込めば完成! 少し力がいるので、小さなお子さんはパパやママと一緒に参加しよう

続いての「どんぐりクラフト体験」は、大小様々などんぐりに木の枝、松ぼっくりなど、材料がたくさん! その中から自由に材料を選び作品を作っていきます。3つのどんぐりを親子に見立てた作品づくりに取り組むスタッフは黙々と作業。どんぐりに表情をつけたり、帽子や葉っぱを被せたり…集中した時間が流れていきます。「作る人によって全く違う作品ができるのが面白いですね」とスタッフも話していましたよ。

どんぐりクラフト体験」参加料:300円。大小・種類様々などんぐりを使って自分だけの作品づくりを楽しんで

また、季節ごとのプログラムには、泥んこになりながらの田植え体験やお米の収穫祭、川の生きものしらべ、真冬のバードウォッチングなどがあるそう。田植えに参加した息子さんを見守るご両親からは、「子どもがこんなふうに泥だらけになって遊ぶなんて意外。新たな子どもの一面を見ることができて良かった」という声も。最初は泥に足を入れることを怖がるお子さんも多いそうですが、最後は全身泥だけでプログラムを楽しむようになるそうです。

体験プログラム中の一コマ。募集要項や申し込みについてはHPをチェック

100年先のために行う自然保護・保全活動

カシワの丘の野焼きの様子

遠く先の未来にも人と自然が寄り添い、豊かに暮らせる地域を目指して日々様々な活動を行う「九重ふるさと自然学校」。参加型の体験プログラムを通した地域の自然や伝統の継承のほかにも、日々様々な自然保護活動にも取り組んでいます。そのひとつが地域の自然を維持するための野焼き活動。さらに、全国的にも縮小の一途をたどる草原や雑木林に生息するチョウ類の保全活動も実施しています。くじゅうの子ども達に地域愛を育んでもらうため、九重町や公民館、小学校などと連携しながら共同事業として若い世代の育成にも力を入れているそうですよ。

体験プログラムの一つの源流探検(九重町子ども育成)

フィールドの散策や体験プログラムへの参加、ボランティアスタッフとして保護・保全活動に関わるなど、みなさんもぜひ、足を運び自分に合った方法でくじゅうの自然と向き合ってみてはいかがでしょう?

多くの登山家にも愛される絶景スポット!タデ原湿原

タデ原湿原。木道が整備されているため、小さいお子様からご年配の方まで、ベビーカーや車いすでも散策を楽しめる

貴重な湿原植物が多く群生するタデ原湿原。今回は、エコツーリズムガイドや自然保護事業などをくじゅう地域で行う「くじゅうネイチャーガイドクラブ」の増田啓次さんにおすすめのポイントを聞きました。

「くじゅうネイチャーガイドクラブ」の増田啓次さん

増田さんが考えるタデ原湿原の魅力は、やっぱり四季折々の自然。3月下旬から4月上旬にかけて行われる野焼きにより、真っ黒になった地面からサクラソウをはじめとする春の花々が芽吹く様子はとても感動的だと言います。

春の訪れを告げるサクラソウ。ピンクの花びらがきれい!

湿原に最も花が咲き誇る季節は7月中旬頃で、ノハナショウブや絶滅危惧種のヒゴタイをはじめとする数多くの花との出会いを楽しめるそう。そして11月上旬にはリンドウやヤマラッキョウといった秋の花が姿を見せ、いよいよ湿原は静かなる冬のシーズンを迎えます。

花径5センチほどのボールのような花を咲かせるヒゴタイ

タデ原湿原の冬の魅力を尋ねてみると、「アニマルトラッキングという言葉を知っていますか?」と増田さん。アニマルトラッキングとは、 野生動物の跡を追いその生態を観察することだそうです。雪が止んだ翌朝は、夜に動いた動物たちの足跡が湿原内に…! それらの足跡をたどり、どんな動物が歩いたのか、一体何をしていたのかを探るのはまさに冬ならではの楽しみ方ですよね。

この足跡は誰のもの…?? 雪に残る小さな足跡が可愛い

また、タデ原湿原を歩いた人々からは「すぐ側がやまなみハイウェイという大きな道路にも関わらず、こんなにも素晴らしい自然が広がるなんて!」といった驚きの声が聞かれることも多いようです。

湿原の自然について学び、その時期その時期の動植物の姿を追いたいという人は、ぜひ「くじゅうネイチャーガイドクラブ」へ問い合わせを。個人・団体を問わず、ガイドをしてくれるそうですよ。

そして、タデ原湿原の入口に位置する入館無料の施設「長者原ビジターセンター」にもぜひ立ち寄りたい。館内に足を運べば、映像や展示品によって地域の自然や歴史、湿原の季節の情報などを知ることができます。

長者原ビジターセンター

おわりに

美しい自然で知られるくじゅうエリア。その素晴らしい景観は多くの人々の手によって保たれていることがわかりました! 休日を楽しみながら地域の四季や歴史について学べば、高原散策がもっと楽しめますよ。

・九重ふるさと自然学校

大分県玖珠郡九重町大字田野1726-408

0973-73-0001

9:30~17:00

火曜休み

https://www.7midori.org/kokonoe/

・NPO法人くじゅうネイチャーガイドクラブ

https://kuju-ngc.com

※問合せはHPのメールより

・長者原ビジターセンター

大分県玖珠郡九重町大字田野255-33 

0973-79-2154

9:00〜17:00(11月~4月は16時閉館)

年末年始休み

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