1. Top
  2. Magazine
  3. 災害の先に見えてきたもの ­­-日田市大鶴地区­-

行ってみたやってみた

災害の先に見えてきたもの ­­-日田市大鶴地区­-

「ここは最高の場所!」

2023.03.30

日田市大鶴地区は、緑豊かで水の澄む、素敵な景色に包まれた人の心を和やかにしてくれる場所。

日田市大鶴地区は、緑豊かで水の澄む、素敵な景色に包まれた人の心を和やかにしてくれる場所。肥沃な土壌と清らかな水で、自然の恩恵を多く受ける反面、自然の脅威もダイレクトに受けてしまう。平成29年、福岡・大分に大きな災害をもたらした「九州北部豪雨」の際には、大鶴地区は大きな災害に見舞われてしまった。

地区を流れる大肥川が氾濫、集落の多くの住宅などが全半壊し、人的な被害も出てしまった。

このように大きな災害が出てしまうと、地域が廃れていくことが危惧されるが、大鶴には地域の復興に向けて立ち上がる人がいた。今回はそれらの人の中から4人を紹介。



「地域を支える人」
 やさい工房沙羅 井上さん

井上さんは大鶴地域の農作物直売所「やさい工房沙羅」の店主。地域のお米や新鮮な野菜を販売する傍ら、地域の人のお困りごとに応えるため、遠くまで買い出しに行った日用品も販売している。このお店は地域の人が生活をする上で本当に欠かせないはず。

そんな地域にとって最も重要な人のうちのひとりである井上さんは、大鶴出身なのだそう。大手メーカーで勤め上げ、その後地域のために16年間、ほぼ無休で働いているのだという。「地域への恩返しのため」ただそれだけを原動力に働く。並大抵な覚悟でできることではないが、そんな井上さんのお店も豪雨災害に襲われた。「1m以上水没して、動きが取れなくなって棚の上で一晩を明かした」と語る。

たくさんの地元の人やボランティアの人たちの力添えもあり、大きな災害にも関わらず、地域を支えるという一念で、2か月半ほどで直売所を再開。この信念があったからこその再開だと思った。

「大鶴はいい所やし、地域の人が困るから」。想いはたったそれだけ。だけれども何よりも重い。


「地域を興す人」
 宮崎さん

日田市の地域おこし協力隊で、沙羅を拠点に災害復興後のお手伝いや地域おこしをしている宮崎さんは、そんな大鶴のポテンシャルに可能性を感じて活動している。災害で途絶えていたJR日田彦山線も、バス輸送による「BRTひこぼしライン」として生まれ変わることが決まり、新たな地域づくりに動き出したこの地域に魅力を感じ移り住んだとのこと。IT・プロモーション関連の会社で務めていた経験を活かし、マルシェ・SNSでの情報発信など、アナログ・デジタル両面での地域活性化の活動を行っている。

「大鶴の魅力は、地域の人が熱量高く、優しく受け入れてくれること。そんな地域の人が望む形で地域を発展させるお手伝いをしたいと考えています。大鶴が大分で一番良い地域になると信じているので、自分がまちづくりに関わりながら成長過程を一緒に見たい」と語る。若さ剥き出しの情熱はきっと地域を前に進めてくれるのだろう。


「地域に魅せられた人」
Mio Gattina(ミオ ガッティーナ)花田さん

動物好きの花田さん。32歳の彼は、福岡で長くバーテンダーをやっていたのだとか。日田の自然に魅せられて、ペットと自然いっぱいの中で暮らしたいと移住。当初はソファーの営業などをやっていたが、ピザのお店を始めた。ちなみに屋号の「Mio Gattina」は、私の子猫という意味らしい。

コロナ禍でのスタートだったこともあり、移動販売と店舗の二足の草鞋。

店舗は国道211号線沿いの街中から少し離れたちょっと油断をすると見落としてしまう場所にあるが、自慢のピザを目当てに、最近ではお客さんも増えたのだそう。

商売をする立地としては特別良くはないが、ここを選んだ理由はやはり人と環境。

国産小麦と地元の季節野菜で作るナポリピッツァは、都会じゃちょっと作れない贅沢な一品。

花田さん曰く、ここに移住して、自然、人間関係、生活、すべてが充実したのだとか。


「戻って魅力を再認識した人」
ハーブ工房わんころりん 江田さん

随分前に地元を離れていた江田さん。移住先ではハードワークがたたり、心身ともに疲れ切っていたとのこと。大鶴の自然いっぱいの環境の中で育ったので、自然や草花との繋がりを強く感じていたからか、地元を離れた後もずっと自分でハーブを作り、それを支えにしていたのだそう。

家庭の都合で地元に帰ると、災害などでまた心を痛めていた。

そんな時でも自分を支えていたのはやっぱりハーブ。

そんな江田さんは、ハーブでたくさんの人を支える決意をし、「ハーブ工房わんころりん」をオープンした。

屋号の「わんころりん」は、愛犬(パートナー?)のわんころからネーミング。大鶴駅のすぐ裏の店舗の窓からいただく景色は桜並木と大肥川。災害のリスクを考えるとちょっと怖さも感じそうだが、それをはるかに上回る絶景から得られるやすらぎがあるのだそう。

子どもの頃は当たり前だった自然いっぱいの景色の中にある植物で、今はハーブを作っている。何もないのではなく、何でもあるのだと気付かされる。

いずれは、全部地元産のハーブにして、地産地消による地域おこしまでをも夢見て実行しているのだそう。

ハーブについてたくさんのお話を熱っぽく語ってもらった。詳しいお話は直接「わんころりん」さんで。

急に行ってもいないことが多いので、まずは電話で予約して行ってみるといいかも。

最後に江田さんに聞いてみた大鶴ってどうですか? 

「大鶴は人、空気、自然、すべてが最高。これからももっともっと大鶴にこだわっていきたい」と即答。



「地域を支える人」「地域を興す人」「地域に魅せられた人」「戻って魅力を再認識した人」

みんな口々に言うのは「ここは最高の場所!」。悲しい災害は起きてしまったが、これからを見据えた多くの人に支えられ、大鶴は大鶴らしく、もっと飛躍していくのだろう。

大肥川沿いの散歩道はノスタルジックな気持ちにさせてくれる。 心が疲れてしまった時に、癒しをもらえる素敵な場所なので、休みの息抜きにどうぞ。


Scroll top