行ってみたやってみた
筋湯温泉
温泉は別府・湯布院だけじゃない!
標高1000メートルで味わう癒しとエモさ。
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2023.01.04
大分県はおんせん県。全国的に有名な温泉地である別府、湯布院ばかりがクローズアップされがちだが、日田、天ヶ瀬、玖珠、長湯、国東、耶馬渓、久住、山香…などなど、大分県内のあちこちから湯が沸きだしていて、県全体が温泉地と言っても過言ではない。
そんな中でも筋湯温泉は、歴史があり、レトロな味わいたっぷりの、隠れた人気温泉街。
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九重I.Cを降りて県道40号線(ぐるっとくじゅう周遊道路)を通っていると、道路の両脇からたくさんの木々が覆いかぶさってくる。木のトンネルを抜けると開けたすすき野。窓の外の景色がどんどん入れ替わり、あちこちで車を停めてその景色を写真に収めようとする人の姿を目にする。30分程進むと、筋湯温泉の公共駐車場に到着。
森や木に包まれて、駐車場からは温泉街の全景はわかりづらかったので、駐車場にある小さく控え目な看板を頼りに、車を置いて先ずは散策してみることに。
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森が続くなか、少し歩くと視界が開けて案内看板が登場。
森に飲み込まれているというか包まれているというか、ここにしかない独特な雰囲気。
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こちらも少し森に飲み込まれそうな案内看板を見ると、温泉街には約20もの宿泊施設があり、森の中で全容がわからなかったこともあり、思っていたよりも大きな規模の街であることにちょっと驚く。
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雰囲気の良さから、案内看板に頼らずに歩きたくなって散策。名物の打たせ湯やきれいな観光写真でしかこの街を見たことがなかったが、実際に中を歩き回ってみると、本当の魅力が見えてくる。
元々が湯治場だったことの名残りか、きれいな景色、味わい深い建物、あちらこちらから噴き出す湯気など、ガイドブックで見る光景だけではなく、歴史を感じさせる程よく古かったり廃れていたりする雰囲気も、この街の味わいのひとつになっていることに気付く。
大きな商店や派手な楽しみは無いが、町全体が癒しのアミューズメントパークのようだ。
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名物のうたせ湯に入ってみる。
昭和の名残りがプンプンする脱衣所を抜けて扉を開けると…、
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この光景。
日本一の打たせ湯と呼ばれているので、とんでもなく強いお湯がすごく高いところから、降ってくるのかと思っていた。見た目は想像どおりだったが、どんな感じなのか試してみた。
「ビタビタビタビタ…」一見そうは見えないお湯は、二本の筒から降ってきて両肩を強く叩く。日頃からパソコン業務ばかりしていて、マッサージ師さんから指が入らないと不評な私でも、少し痛く感じるくらいの気持ちよさで全身の力が抜けていく。
あまりに気持ちよくて「これは動けん…」と快適さに酔いしれる。長時間打たれていたいほどだった。これで300円…。最高やん。
湯治場の名残りを残す温泉街の本当の魅力を体感し、取材熱が高まったところで次の取材先へ。
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一旦筋湯を飛び出して周辺をドライブ。
見えてきたのが九州電力八丁原発電所。
太陽光、風力、水力、バイオマスと、エコな発電は数々あるが、ここは日本では珍しい地下から取り出した蒸気で電気を作る日本最大の地熱発電所なのだ。
ここだけで約3万7000世帯(1世帯あたり平均値計算)の電気を賄うことができるとのこと。
筋湯一帯は、人の生活を支え人を癒す、温泉や蒸気の力が溢れたエリアなのだと確認。
ご時世もあり、見学は人数制限の予約者のみ。
エコエネルギー発電への関心の高さからかおすすめの施設だ。
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筋湯の成り立ちなどについて取材したかったので、テレビ番組やCMで有名な「九重悠々亭」に行ってみた。
「九重悠々亭」といえば“エンジェル君”。
何十年もCMが流れていて、九重悠々亭の屋号よりもエンジェル君の方が有名なのかもしれない。
エントランスに行くと、
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出迎えてくれた。
少しお年を召してきて、動きは緩やかではあるが、愛くるしい顔で自分から進んでお客様のお出迎えやお見送りをしてくれるのだとか。まるで自分がこの旅館を背負って立つ営業マンのように、次から次へとお出迎え…。
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筋湯温泉のお話を聞きたかったが、女将のエンジェル君愛が止まらないので、そこから話を聞くことに。
聞けば、エンジェル君は3代目。サモエドという犬種で、日本にあまり多くいないのだという。頭の良さとその愛嬌から、1代目も2代目も看板犬としての役目を見事に果たして来た。CM以外でもテレビの出演回数が多く、初代はサスペンスものなどに6本、2代目は2本出演。3代目は時代の変化に対応して、活躍の場をネットに移し、某旅行予約サイトの看板犬人気ランキング1位に輝いたり、英国航空が企画した日本でお仕事する8頭のワンチャンにも選出されたのだとか。
コロナ禍は、宿泊業にとって大変な試練の時だったのだが、「どうしてもエンジェル君に会いたい」という声をもらったり、「エンジェル君は元気?」と連絡をくれる多くの常連さんとのご縁に女将はもちろん、九重悠々亭自体も支えられたのだと言う。
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ようやく筋湯温泉のお話。
「筋湯温泉」は、1000年以上の歴史を持つ温泉郷。温泉地として開かれたのは1658年で、古くから湯治場として愛されていた。明治30年、昭和24年の大火で温泉街のほとんどが焼失したが、努力の末、春は新緑、夏は避暑地、秋は紅葉、冬は雪降る山間の湯治場として主に福岡からのお客様をお出迎えする場所として賑わった。当時では珍しい水洗トイレを完備し、床屋、ストリップ、スナックなどが点在するにぎやかな温泉街だったという。
近年は、修学旅行客やインバウンドのお客様も増加して、今のように自然と静けさに包まれた美しい温泉街に姿を変えたのは、長い歴史の中ではほんの最近のことなのだとか。
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温泉の特徴を感じるために、館内の温泉を案内してもらった。
九重悠々亭の館内だけで、打たせ湯、樽風呂、蒸し湯など、24のお風呂が楽しめる。泉質の良さはもちろん、自然と景色に溶け込んだお風呂が最高に気持ちいい。
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宿泊者が使える「いやしの館」
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ペットホテル「わんちゃんの宿」
も、ここにの特徴。
筋湯温泉全体のイベントとしては、星空を眺めるナイトハイクや、自然を満喫するイベントなどを不定期ではあるが開催しているのだとか。
気になったのは女将のスタイルの良さ。「女はいくつになっても女じゃなきゃね」と、和服じゃない時は常にヒールを履いて活動している。そういえば発言ひとつ、行動ひとつ取ってもなんだか若い。
その若さ?と勢いで結成された、筋湯温泉の女将8人のアイドルユニット「OKM8(おかみ8)」のメンバーなのだとか(アイドルだったんですね)。活動範囲はYouTubeやTikTokなどのSNSツールで、インターネットを通じてが主。実際に会いたくなったら、筋湯温泉に遊びに行ってみて!
【OKM8 -旅館の女将8人組-】
https://www.youtube.com/@okm8-8-62