行ってみたやってみた
郷雲 - go-un -
古民家の蔵を生かした
山の中のワーク・ステイ・カフェバー
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2022.06.30
大分県日田市天ヶ瀬。豪雨災害からの復興が進むこの地域を走っていると、難しいのが「スケジュールの組み方」。
復旧のための工事区間が多く、関わる全ての人に対して感謝と尊敬の念はしっかりと持っているのだが、先方との約束や、インターネット
を介した会議に遅れてしまうこともしばしば(早く出ればいいのだが…反省)。
そんな不測の事態をちょっとでも回避したいと、最近オープンしたコワーキングスペース(パソコンなどで作業する人向けの時間借りスペ
ース)に遅刻を反省して下見を兼ねて取材に行ってみた。行く前にちょっと下調べ。古民家の一軒家の蔵の中にカフェバーがあり、宿泊も
できるとのこと…。どういうこと? なんか色々と欲張り過ぎではない? と思いながら、百聞は一見に如かず。細かいことは考えず、と
りあえず向かおう。
ホームページや地図サービスの情報に従って国道210 号線から山へと延びる道へ。道がだんだん狭くなってちょっと不安な気持ちに…。
1km 弱で、「目的地は左側です…、良かった、合ってた。」ってところに存在した。
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でも、車幅は広めなのでご安心を
車を降りると、ものすごくというほどの田舎ではなく、たまにテレビやネットで見る昭和の時代にタイムスリップしたみたいと言えば正しいのだろうか。とにかくのどかで良い所。
直前の取材依頼にも快く対応してくれたのが、支配人の築地(つきじ)さんと、スタッフの山田さん。あまりにも息が合っているので、ご夫婦かと思ったのだけれども…、違った。
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聞けば、築地さんは、長崎の建設会社『浜松建設』のスタッフの方。建設業の事は良く知らなかったけれど、日田・天ヶ瀬にこの郷雲を作る計画を聞いて「ぜひ」と長年勤めた飲食の経験を生かせるここで働くことにしたのだそう。
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長崎の会社がなぜ天ヶ瀬?
天ヶ瀬の中でもなんでココ?
質問がたくさん浮かんだのでとにかく聞いてみた。
工事関係でご縁ができた社長が、好きになった天ヶ瀬のまちおこしの一環になればと、市内 10 か所ほど見てまわり、田舎の原風景の中にたた ずむ蔵付きの古民家に一目ぼれし、自身の建設会社のノウハウで、コワーキングスペースと宿泊と飲食(カフェ・バー以外は準備中)ができ る施設にリノベーションしたとのこと。なんともお洒落な佇まい。
たしかに元々日田天ヶ瀬といえば、やはり川沿いにある自然に包まれた温泉街のイメージだったが、最近は本来の良さを活かしながら進化して いる。若者が中心になって、温泉街をライトアップする試みが行われていたり、街にかかる天瀬橋や観光名所の桜滝は、人気マンガ『進撃の巨 人』の AR スポットになっていたりと、ここまで築き上げられてきた文化にどんどん新しい魅力がミックスされるているのも、この地域の特色になっている。
そんな素敵な天ヶ瀬に、さらに県外の人の新しい感覚が加わり、もっと大きく広がって行きそうでなんだか嬉しい気持ちになる。
建物は温泉街からちょっと登った上り坂の途中にあるが、ご近所付き合いはバリアフリーで、近所のおばあちゃんがフラッと遊びに来て、よも やま話に花が咲き、地域住民の交流スペースにもなっているそう。福岡生まれの支配人にとっては、このコミュニティが新鮮で居心地が良いの だとか。
もうひとつ、郷雲について気になっていたことを投げかけてみる。コワーキングスペース、カフェバー、宿泊と欲張っているように見えるが、 特におすすめなのはどれですか? と尋ねると、お二人とも揃って「全部」とのこと。使う人の用途と希望に合わせて使って欲しいというのがその理由。なるほど、お客様の希望・願望を叶えようと思ったらこの形になったんだなと納得。
オープンは 2022 年 4 月 29 日。
宿泊とコワーキングスペースは母屋。
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879-4202
大分県日田市天瀬町赤岩 490
TEL 080-8502-0362
コワーキングスペース、宿泊、カフェ・バーの営業時間・料金など、詳しくはホームページでご確認ください。
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宿泊は贅沢に古民家の母屋を 1 棟貸し。
部屋数が多いため、複数の仲良し家族での予約がチラホラ入っている様子。
オープンしてすぐに小さいお子様連れのご家族の宿泊があったのだが、住んでいる地域には古民家や蔵などは無いとのことで、初めて見る 新鮮な景色や建物で、子どもたちはヒートアップ。「走り回っても、ホテルのように気を遣わなくて良いのが嬉しい」とのご家族の感想。晩御飯はバーベキュー(グリルと食材の用意可能※問い合わせを)のみの提供とのことで、それ以外の飲食物は予め買って持って行くのがオススメ(持ち込みも可とのこと)。
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「田舎のすばらしさを改めて実感」 との声
古民家をリノベーションしたコワーキングスペースは全 6 区画。テーブル、ソファ、畳に座椅子。好みに合わせて好きな所で作業できちゃう。あまりの居心地の良さに、週末に子ども連れでやって来て、息抜きと仕事を兼ねたワーケーションをするお父さんもいるのだとか。
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自分のが食べる分以外にも「仏壇に供える」 と
買って帰られるほどの意外な人気となっている。
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大分県在住の筆者にとっては、田舎での生活が当たり前になっているので、移住してきたお二人の新鮮な目線での天ヶ瀬や施設まわりの感想を聞いてみた。
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…ん、そこ?
とは思ったが、そうか、それも当たり前じゃないんだな。
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東京暮らしが長かった築地さんに他を聞いてみると、
「天ヶ瀬は日田市内から車で約 30 分。福岡までも 1 時間ちょっとなので、便利っちゃ便利。買い物などで漏れがあった時などの買い物環境を考えると、不便っちゃ不便。でも、ここにしかないものはたくさんあるなといつも思います。具体的には、人口が多いエリアだと、自分から アクションを起こさないと何も起こらないけど、ここだと近所の人や色んなお客様がフラッとやって来て、毎日何かが起こるので毎日が楽し く新鮮です。地域の人がやさしく受け入れてくれる感覚も嬉しい」
最後に、取材に来て本当に良かったと思えるひと言を聞けて、大満足な訪問になった。 景色や建物、お二人の雰囲気と、もうちょっと長居したくなる材料ばかり。 遅刻対策くらいの軽い感覚でお伺いしたのだが、郷雲はもちろん、天ヶ瀬の魅力を再発見しに、家族サービスがてら泊りに来ようかなと思った 取材になった。