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行ってみたやってみた

童話の里の台湾料理?

さすがに無理でしょ…

2022.11.15

大分県玖珠郡玖珠町。毎年5月こどもの日に“ジャンボこいのぼりのくぐりぬけ”が楽しめる「日本童話祭」や、町を象徴する切株山の山頂で巨大ブランコを楽しむ「ハイジのブランコ(通称)」、SLを常設展示している「旧豊後森機関庫」など、小さい子ども連れにはたまらないスポット。
最近では広大過ぎる自然を活かしたキャンプ場も大人気で、人口1万5000人弱のこの町に、多くの若い人が訪れています。

そんな町に突然登場した“台湾料理騒ぎ”。
どうやら町中に台湾料理メニューが複数登場したとのこと。
「なんでなん?」、疑問が尽きないこのイベント。
考えていても仕方ないので、行ってみたやってみた。

まず訪れたのは玖珠町観光協会の新川さん。

協会では、町中の人と話し合いをしながら色んなイベントを仕掛けたり、時には福岡のお祭りにジャンボこいのぼりを持って行ってくぐりぬけ体験をしてもらい玖珠町をPRするなど、さまざまなアイデアを実現している。

だけれども…台湾料理。

いくら玖珠町のことを考えての仕掛けとはいえ…。

童話の里で台湾料理…、さすがに無理矢理でしょ? でも、ちょっと話題になっているし。

と思って、お話を聞いてみた。

単刀直入に聞いてみた「意味が分からないんですが…、なんで台湾?」。

「きっかけは豊後森機関庫なんです」。

新川さんは続けて、

「豊後森機関庫は、国の登録有形文化財や近代化産業遺産に認定された町のシンボル的存在。特にSNSの写真映えするスポットとして観光客に人気が高いです。ここの機関庫の特徴は珍しい扇型の形状。同じような扇型の機関庫が台湾の彰化市にあるご縁で、玖珠町と台湾の国鉄は2019年12月に姉妹友好協定を結びました。折からコロナ禍で観光客が減った飲食店をバックアップをしたいとの想いから、今回のイベントが始まりました」。

「今回はそんなに大きくないアクションですが、台湾料理を通じて、ゆくゆくは台湾との人の行き来まで含めた大きな交流の輪ができるといいなと思っています」。

と、大きなビジョンまでとびだした。

なんか変わったことやれば誰かくるんじゃないのとか考えているんじゃ?

なんて思ってスミマセン…。先まで見据えた壮大なアイデアでした。

しっかり理解できたので、今回のイベントのルーツとなった玖珠町の機関庫へ。観光協会の横の駐車場から5分ほど歩くと、目的地に到着。

あいにくの曇天だったけど、やっぱりすごい。

扇型の機関庫の前に大正8年に製造された蒸気機関車、通称「キューロク」がたたずんでいて、景色に馴染んだ地域に愛される場所。

機関庫の場所から玖珠川をまたいだ反対側に住む犬を散歩中の女性と遭遇。お話を聞いてみた。「ここは地域に大切にされている場所で、私も好きな場所なんです。犬のお散歩コースになっているのですが、毎日たくさんの人と犬がやってきます。草刈りなんかも毎週のようにやっていて、いつ見てもきれいな景色が保たれているのがすごいですね」とのこと。

どこを見ても自然がいっぱい。“住んでみたい!”と本気で思える場所。

玖珠町の台湾料理参加店の、その全部は回り切れないので、4軒をピックアップして行ってみることにした。

先ずは「地瓜球」を出している「田舎食堂いいとこ焙(ばい)」さんへ。

ちなみに、地瓜球は「ちうりきゅう」ではなく「ディーグゥアーチョウ」って読むらしい。

さつまいもを丸く練ってジュワっと揚げたスイーツ。パリパリッとした食感とさつまいもの自然な甘みで、ちょっとだけ人気なんだそうだ。このイベントで、美味しいと言ってくれるお客さんとの接点ができて、いつもの自慢のお食事を食べてもらう機会ができたことで喜んでいた。忙しいところにお邪魔してしまい、あまりお話ができなかったが、また来たいお店。素朴なものがやっぱり一番旨いのだ。

続いて「豚なん骨の魯肉飯(ルーローハン)」を出している「紫陽花」さんへ。

紫陽花さんは元々玖珠町で長く続く人気の焼肉と中華のお店。

台湾料理の取材とはいえ、店内にはほのかに香る焼肉の匂い…。どうしても焼肉を食べたいという衝動を抑え込み、魯肉飯を注文。

焼肉も旨かったんだろうが、大正解!! ランチでよく行くお得で美味しい町中華とは違い、人に連れていてもらえて嬉しくなる“いい店”のような味付け。超大当たりと言っても良い。

豚なん骨が柔らかく、オイスターソースベースで食欲をそそる。半熟玉子や青菜、キムチなどと食べると「味変」まで楽しめる。

久留米の有名中華料理店で働いていた息子さんが帰ってくるのと同時に、焼肉と中華の店に生まれ変わったのだそう。なるほど…。台湾で食べた魯肉飯(ルーローハン)とはちょっと違う気がするが、こちらの方が日本の人の味覚には合いそうだ。

おなかが膨れても取材は続く…。

スパイスの残る口の中、お口直しにスイーツを。

「台湾カステラショートケーキ」の「お菓子の家えいらく」さん。

今回の台湾料理は、店主それぞれのアイデアで、イベントを盛り上げるためのアレンジを加えているところが面白い。

通常よく目にする台湾カステラは、四角形のちょっとすました人気者。ここのはひと味もふた味も違う。生地にバナナを練りこんで、カステラ風にして最後はケーキになっちゃったという一品。口に入れるとしっとりし過ぎていない柔らかいカステラを口に放り込んだ時のように、口の中でフワッととろけて、バナナの香りが鼻へと伝わる。

昭和の懐かしさと、新しい取り組みが融合したおかわり必須の美味しいケーキ。

「えいらく」さんは、2021年に改装しておしゃれになったが、創業は昭和4年。ずっと地元とともに生きてきた地域を愛して愛されるケーキ屋さんだ。

地産地消についても真剣だ。人気の「くすまごころプリン」は、玖珠の牧場で育った牛の搾りたての生乳と、地卵を使って作っている濃厚な一品(詳しくはホームページ https://eiraku.net/lineup-3/magokoro/ で)。「サバリン」という菓子もおすすめ

持って帰るまで我慢できず、外でパクリ…。

この表情で感じ取ってください。

3キロ太る覚悟で来ました。

最後に「五香麻婆豆腐」の「食蔵雷峰」さん。

人気メニューの麻婆豆腐を、台湾のスパイスで台湾風にしたひと品。

なぜだ? 玖珠には旨いものばかりだ。

アジアの強すぎる香辛料をあまり得意としないので、麻婆豆腐は危険かなーと思っていたのだが、ペロリ完食。風味はアジア、味は日本人向けにアレンジされていた。近くにあったら毎晩通ってしまうかも。

何を食べても美味しくて、気付けば関係のないものまで注文。あとで知った情報だと、大将は元力士とのこと。しまった、ちゃんこ鍋も食べるべきだった…。

人気の激辛麻婆豆腐が強すぎて、そこまで注文は多くないようだが、迷ったら両方頼んでみるのもおすすめ。食べ比べて楽しんでみては?

地域主導の小さなイベントがご縁になり、たくさんの美味しいものや人に出会えた。

地域を作るのはやっぱり人とアイデア。

いつか本当に台湾から多くの観光客がやって来る日が来るかも。

【玖珠的台湾飯店HP】
 https://kusu-tourism.jp/kusu_taiwanhanten/

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