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行ってみたやってみた

豆田(まめだ)町

どこを撮っても映える天領の街並み

2022.09.29

取材時は7月。暑い暑いとは聞いていたが、日田の夏はとにかく暑い。まずは車を停めて、江戸幕府の直轄地・天領として栄え、今もその町並みを残す豆田町の街歩き。街中の写真はどこを撮るのか決めておらず、「ま、いっか、当たって砕けろ」の精神で街中散策…。
しかし、不安は杞憂だったと一瞬で気付。「インスタ映え」という言葉が流行ってしばらく経つが、どこで写真を撮ってもとても映えるのだ(これほどまでとは)。
撮った写真を全部お見せしたいところだが、収拾がつかなくなるので、まずは街中の美しい風景をちょっとだけ紹介。

豆田町の街並みは、石のレンガ道、白壁の建物が特徴的。わかりやすく表現すると「レトロ」とまとめることもできるが、町全体にまとまりがあり、大きな歴史のテーマパークの中にいるような気持ちにさせてくれる。歴史ある建物をリノベーションして作られた比較的新しいお洒落な雑貨屋さんや飲食店も旧家や昔からの地元のお店に調和して、新旧入り混じってひとつの街並みにストンと収まっているのも、印象的。隣は何屋さんなのか、一軒ずつが気になってのぞき込んでしまう。

 

とにもかくにも暑い

今回は豆田町を長い間見てきた歴史ある3つの店舗を訪ねて、きちんと歴史も知っておこうという取材旅。

1件目
「クンチョウ酒造」

日本酒・焼酎。ノンアルコールなどを販売する「蔵元ショップ」、「カフェ&ギャラリー」、「酒造資料館」、そして、麹を使ったお料理とスイーツが楽しめる「発酵舎KOGURA」を併設している蔵元。

専務の冨安裕子さんと冨安大二郎さん親子にお話を聞かせていただいた。

クンチョウ酒造としての歴史は103年。ただ、歴史を紐解くと江戸時代にまで遡るという。

最初に日田市観光協会の会長でもある冨安裕子さんにクンチョウ酒造と豆田町の歴史について、お話を伺った。

最初に冨安裕子さんにクンチョウ酒造と豆田の歴史について、お話を伺った。

江戸時代に丸屋という屋号を称した千原家が始めた事業のひとつである酒造業を、クンチョウ酒造が引き継ぎ、それ以来長く豆田町を拠点として酒造りを続け、今に至るのだとか。

色々とお聞きしたが、本がかけてしまうレベルの面白さと文章量になるため、詳しくはクンチョウ酒造ホームページでご確認を。

本題の豆田町について「江戸幕府の直轄地ってことは城下町ですよね?」と聞いてみた。

「城下町というより商家町です。九州の中央にあって、交通の要衝でした。幕府はここを拠点に九州各地の大名に対してお金の貸付などを行っていたから、九州の金融の中心だったんですよ。今では国の重要伝統的建築物群保存地区にもなっています。」と。

「私が嫁いで来たのは昭和59年で、その頃豆田町は今のような観光地じゃなかったんです。草野本家のひな人形が話題になって、テレビなどで紹介されて段々と…。それでもそのシーズンしか観光客は来なかったから、これじゃいけないだろうって、うちも酒蔵のツーリズムをやってみたり、頑張って色々と観光客誘客の取組を行いました。2001年に文化庁の重要伝統的建築物群保存地区の候補になってから、市長が電柱を撤去したりして、どんどん景観も洗練されてきました。みんなでコツコツ頑張って、持っている観光資源を活かした街づくりをやっていこうとやってきた活動が今の豆田町を作ったと言っていいんじゃないかなと思っています」。みんなの熱量で作った町だったんだ、ますます町が素敵に見えてくる。

「まだまだ課題もあって、車の通行量が多くなってきたので、観光客がもっと歩きやすくするような対策を考えるとか、何回も来たくなる街にしていかないといけないと思いますね」と、自分の会社やお店と地域が密接につながっているという意識が豆田町を進化させたんだなとちょっと感動した。

続いて息子さんの冨安大二郎さんにこれからについてを聞いてみた。

「2021年から豆田町の人、モノ、資源を繋ぐイベントを始めたんです」。お茶会や1日限りの料亭(ダイニングアウト)など、宿泊施設にチェックインしてからの2時間(15~17時)程度を過ごしてもらうイベントを開催しているのだそうだ。さらに、豆田町の観光資源をどう伝えるか、どう楽しんでもらうかについて、若い人たちでいつも考えているのだとか。豆田町のこれからを担う世代にもやはり自分の会社やお店と地域が密接につながっているという考え方が根付いていて、これからの仕掛けが楽しみになる。

 

2 件目は「日田醤油」

お話しをお聞きしたのは中山専務。先ほどのクンチョウの大二郎さんが物静かでやさしい人だったのに対して、日田醤油の中山さんはわかりやすく言うと、とにかく明るいお調子者で、でも気遣いができる人で町中でも人気者。褒めたのかけなしたのかわからないが、本当にいい人なのは間違いない。

豆田と日田醤油について聞こうと思い、何の話をしても、それるそれる…(乗る私も悪いのですが笑) 1時間以上の雑談を経て本題へ。

中山さんには、豆田町と日田醤油の歴史についてお聞きしました。

天保14年、ご先祖さまの宮大工だった中山平一さんが麹屋として甘酒と味噌醤油の醸造販売を開始したことが始まり。突然「中山平一さんはかなりクレイジーな人だったと思う」と話す子孫に、頭に?マークを浮かべていると、続けてこう言った。「当時、味噌はそれぞれの家庭で作るものだったから、それが売れるとなんで思ったんだろう?」と疑問に思ったとのこと。そんな子孫の不安を吹き飛ばすように、商品は大ヒット。1949年6月には天皇献上の栄誉まで手に入れた。時代の流れを読める人だったのだろう。中山さんは「これから世の中は、人口が減るし、自分で出汁を取る人も減る。手の込んだメニューも家ではなかなか作らなくなるから、濃縮出汁やスピードメニューが売れるようになる。味噌・醤油だけじゃなくて、時代とともに商品と売り方を考え続けなきゃならない」と続ける。仕事の話をする時、中山平一さんの先を読む力は、ちゃんと引き継がれているのだと感じた。

豆田町についても聞いてみた。

「豆田町は「上」と「下」2つの通りがあるけど、これがうまく1つにまとまって一緒になってPRができるといいなー、みんな買い物しやすくなるし」と。

日田醤油は、豆田町の観光に、本業以外でも力を入れている。

日田醤油店舗の一角にある「雛御殿」。約4000体のお雛様が所せましと展示されている。クンチョウさんでお話をお伺いした中に、昔は春先しかひな祭りの観光客を誘客できなかったという言葉があった。そのような状況を受け、日田醤油さんが、オフシーズンでも日田でひな人形を見たい観光客のニーズに応えて、日本中からひな人形をかき集めて通年展示を始めたのだ。「せっかく来てくれたのに今は展示してないんですじゃ、お客さんに申し訳ないやろ」。商家町のイズムは豆田町のあちらこちらで感じることができる。

みんなで豆田町の事を考えて、みんなで豆田町を盛り上げる。大切なことを当たり前にやれる人がたくさんいる。これってホントにすごいと思いませんか?

それでは最後の取材に

3件目は「日本丸館」

なぜか日田醤油さんがガイド役( 笑)

こちらの創業は江戸末期の安政2年。天保とか安政とか、日本史の教科書で習った「天保の大飢饉」とか「安政の大獄」の頃からあるお店があちこちに存在…。

18代当主の岩尾さんに話を聞いた。

14代が岩尾家に代々300年にわたって伝わる家伝薬を基に、薬種屋(今でいう薬局)の「伏見屋岩尾古雲堂」を開業したことに始まる。15代が家伝薬に朱色をかけて日の丸をイメージする心臓・熱さまし薬「日本丸(にほんがん)」として販売を開始、日本中に販売を拡大し大ヒット商品になった。時代の流れで原料の仕入れが困難になったため、昭和40年代に製造を中止したとの事。

平成14年に国登録有形文化財に登録されている建物は、現在では1階の一部を薬局に。それ以外の部分は観覧可能にして、豆田町の観光振興にひと役を買っている。

豆田町はどうですか?

「とてもいい街。観光地になる前、昔はお互いに切磋琢磨していたからその名残で、商店街と自治会が通りごとに別で、一緒にやれるともっといいのになと思う。あと、車が多いなー」。

また車かー。車の問題は人気観光地に共有した課題であり、難しいところかもなと思う。

1 階薬局写真

展示館スペース

貴重な展示物だらけ。正直、こんな歴史的な施設が県内にあることを知らなかった。見学を終えてちょっと感動して薬局に戻ったら…、

いつの間にか、一人レディーが増えている。

坂本さんはすぐ近くのクリーニング屋さんで、朝5時からお店を開けてカブに乗って頑張って働いている“豆田の顔”なんだとか。

坂本さんに「豆田町ってどうですか?」と聞いてみた。

「豆田町は日常生活に必要なお店が全部そろっていて、生まれてから死ぬまでずっとここにいても何の不自由も無い」のだそうだ。彼女のエンジンが徐々にかかってきて、…言葉が走り出す。続けて「若者が元気ない、気合がはいっとらんからつまらん! でも、女性は甲斐性があるしっかりしている人が多くていいね」

坂本さんの迫力に謝る日田醤油さんと私たち(笑) 漫才の掛け合いのような面白さであふれる時間だった。

豆田町はみんなで作った商家町。街並みの美しさと人の温かさ、アイデアが詰まった面白い街。何より感じたのは、見かける商品にデザインの良いものが多いなと感じた。

遊びに行く際は、日帰りもいいけど、何日間かかけてじっくり楽しんでみては?

【アクセス】
福岡市 – 日田市豆田町 55分
福岡市博多区半道橋I.C – 日田I.C(九州横断自動車道/大分自動車道/長崎大分線 経由
51分)、日田I.C – 豆田町(国道212号 4分)

【駐車場情報】
無料駐車場
市営豆田駐車場 (普通車20台) 日田市港町4−25 
市営豆田西駐車場 (普通車50台) 日田市港町8−54
市営豆田北駐車場 (普通車70台) 日田市丸山2丁目3−1−29
有料駐車場
豆田町上通り駐車場(大分銀行豆田支店兼用)(普通車33台)日田市豆田町4−11

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